経営者インタビュー 五十崎社中 社長

伝統和紙に独自技法吹き込み商品開発
各方面とコラボ、海外販売にも活路

(株)五十崎社中 社長

齋藤 宏之さん

1972年7月22日生まれ、46歳。神奈川県海老名市出身。日大理工学部物理学科卒。インスタを契機にカメラ好きに。自宅には猫が6匹。東京出張は自らマイカーを運転し向かう。

御社は伝統の大洲和紙を使い、ギルディングなどの手法を加え独自商品を製作します。起業から10年が経過しましたね。

あっという間でした。私は元々、NTTにSEとして勤務しており、IT系の起業を考えていましたが、五十崎町で酒造りをしている妻の父親が商工会で伝統の和紙産業を盛り上げる活動を行っていました。生活様式の変化、職人の高齢化から和紙産業が衰退しているという話を聞くうちに興味が湧きました。

思い切った転身ですね。

目に見えるものを作るという本来の商売の一番基本的なところをやってみたいという思いや、やるなら社会的意義がある方がいいし、元々海外で仕事をとの思いもあり、和紙という素材が海外で通用するのではないかと思いました。また、フランス人のガボー・ウルヴィツキという私の師匠がいますが、彼と私の義理の父との出会いを通じ、和紙を盛り上げる活動に協力してもらえることになり、和紙とガボーさんが持つヨーロッパの金箔技法の組み合わせに限りない可能性を感じました。これがギルディングという、箔で装飾してしつらえる技法です。

商品の特徴を教えて下さい。

伝統工芸の手漉き和紙をベースに、ギルディングという技法を掛け合わせたもので、この組み合わせは世界でも弊社だけのオンリーワンの技です。こより和紙という和紙を編む特徴的な技も駆使して自社商品を作り、OEM的な商品も作ります。ギルディングはガボーさんから教わり、彼自身が弟子をあまりとらないのでそういう意味でもユニークな技になります。弊社が素材と技を持っており、色々なデザイナーさんともコラボレーションします。

自社商品と販路を伺います。

壁紙やタペストリーなど建築建材系と、はがきやノートなどのステーショナリー系の2系統に分かれます。壁紙などは建築会社やデザイン事務所など、ステーショナリー系はインテリアショップ、雑貨店、ミュージアムショップなどが多く、県内と東京圏が主体です。ネット販売は1割位しかないですが、紙製品という素材から実際に見て触って判断されることが多いからかなと思います。ただ知名度が上がるにつれ、ネット経由で注文をいただけることも増えました。また、色々な販売会や展示会、伝統工芸の集まりなどに呼んでいただくことが多いですね。今年「三井ゴールデン匠賞」をいただいてからそうした引き合いが増えています。

施工も行うのでしょうか。

施工はあまりしていないですね。基本的に和紙商品を作って納めています。場合によってはパネルなどに仕上げますが、現場では施工業者さんがおられ、資材の提供が基本になります。

道後でも様々な場所で使用されていますね。

道後では今年色々使っていただきました。道後温泉飛鳥乃湯泉のランプシェード、宝荘のリニューアルなど立て続きに使っていただき、非常にありがたいです。

コラボも多いですね。

和紙でスヌーピーのはがきを作っていますが、これは「スヌーピー×日本の匠展」という東京発の企画です。江戸切子や津軽塗など全国の伝統工芸でスヌーピーの商品を作る企画で、愛媛では砥部焼、菊間瓦とともに弊社も選んでいただきました。また、ムーミンの原作者・トーベヤンソンの生誕100周年の企画展の時にもオリジナルのムーミンのハガキを作り、松本零士さんとのコラボも行いました。

職人さんは何人ですか。

大洲和紙手漉き組合に加入するのは弊社も含めて4社しかありません。弊社は天神産紙工場さんとタッグを組んでやっています。天神産紙、五十崎社中を合わせて全体で10人程度です。弊社で泊付や加工するのが私を含め3人程です。弊社は和紙自体も作ります。小さな産地なので分担するなど協力し合って取り組んでおり、注文が集中した時は、地元の女性陣の力もお借りします。

販路開拓はどなたが。

基本的には私がやっています。展示会に出したり個別に営業に行きますし、海外にも行きます。海外は創業当初からやっています。国内で売れればそれに越したことはないのですが、海外にも種をまかないと駄目な時代だと思います。

海外での反応は。

海外はやはり難しいですね。言語や文化、商習慣が違います。ですが台湾と香港には10月に行き、特に台湾は非常に良い手応えがありました。現地では、今年度の「21世紀えひめの伝統工芸大賞」の優秀賞をいただいた和紙ジュエリーが人気です。宇和島の彫金工房さんとコラボした商品です。フランスの展示会に出すと華々しいイメージがあり、フランスは世界中からバイヤーが来るので出展する意味はあると思いますが、市場としてパリなどで売ろうと思うとなかなか厳しいと思います。

海外展示会のルート作りは。

出展したい展示会を自分で見つけて行きます。商社が扱うほど弊社は大きな会社ではありませんし、ジェトロも困った時には相談に行きますが、基本的には自社で情報収集して行きます。ただ、信用取引面に不安はありますね。いい代理店があればいいですが、まだそこまでいっていません。前金でお金をいただければいいのですがね。

海外展示会からの受注は。

採算ベースを考えると特に欧州はなかなかしんどいですね。そういうと夢がないので種をまいている時期とは言っています(笑)。現地で伝統工芸界で最も成功している企業の話によると、10年パリに出し続けてやっと注文をもらえたという感じです。10年間パリに出し続けるという資金的な体力がないと成功はしないと感じました。ある程度の資本力や専門の人材も必要ですね。そうしたなか、ミラノ万博に商品を出させていただいたり、日本を代表する仕事をさせていただけるのはうれしいです。

国内外で展示会の予定は。

来年2月に東京ギフトショーに出展します。まだ本決まりではないですが、愛媛県ブースに商品を展示したり、ディズニーのブースにも呼んでいただいているのでそこに置かせていただく予定です。また、伊織さんが東京のKITTEにシン・エヒメというショップを出され弊社商品も扱ってもらっており、そこで12月15・16日にワークショップをやります。

今後の取り組みを伺います。

海外は台北を中心としたアジア展開が楽しそうです。香港の反応もいいです。日本語が通じますし、日本の文化にも理解がある土地だと思います。弊社単独で進めるのもいいし、県の営業対策本部と連携してイベント的なものをきっかけに台湾市場に出すという作戦を練っているところです。

国内はいかがでしょうか。

キャラクタービジネスも色々とお問い合わせをいただいています。それもやりながら道後温泉などの建築建材系の販路拡大がキーワードの一つかなと思います。ステーショナリー系も引き合いが本当に多いので、生産数を増やしていかねばなりません。壁紙メーカーさんと幾つか事業を進めていて、大手のオリジナル商品として弊社が一部装飾したり、タッグを組むようなことが実績として出てきました。こうしたコラボは一層強めます。四国中央市ではバイオテクノロジーやナノファイバー的な技術で紙加工が進んでいますので、それとの融合ですね。伝統的なものと最先端のテクノロジーとの融合も切り口になるかと思いますので、何かやっていきたいですね。県内でも、全国規模でもいいと思います。そうした交流は積極的に増やしたいと思います。

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