循環器主体に地域医療を支え続けて35年外科を含めた緊急・救急対応にも意欲

喜多医師会病院 病院長

住元 巧(すみもと・たくみ)さん

1954年9月1日生まれ、64歳、広島県出身。愛媛大学医学部卒。97年から現職。愛大臨床教授も務める。3兄弟はいずれも病院長で、その子供も含めると11人が医師。趣味はテニス、ゴルフにクラシック音楽等と多彩で、ワインにも造詣が深い。(週刊愛媛経済レポート2018年10月22日号掲載)

大洲市東大洲に新病院を建設し、同市徳森から移転しました。

新病院は大洲の入り口に位置し、ランドマークになるのではないかと思っています。旧病院の1・4倍の広さになり、患者様の療養環境などアメニティーも飛躍的に改善しています。病院建設はまず職員自らが設計図を考え、それを設計士に伝え作っていきました。職員全員の英知を結集した病院です。職員にとっても働きやすい職場になっており、自分たちで作り上げたという誇りや自信が、優しさやきめ細やかさとして患者様に還元できるのではないでしょうか。

完成直後、豪雨災害に遭われました。

この東大洲に建設する上で水害は大きな懸念材料でした。そのため海抜約10㍍の国道56号に対して約12㍍まで盛土し、塀に防水扉をつけ、病院の全ての入り口に水圧によって密閉する仕組みの防水シートを取り付けました。床上1㌢㍍程の薄い泥水の浸水がありましたが、効果がありましたね。それでもポンプで水を汲み出し、扇風機で乾燥させ全て消毒しました。

大変でしたね。

7月15日に旧病院から新病院に患者さんを移送し18日に新病院を開業する予定でした。開業延期の意見もありましたが、水害翌日の8日に緊急の対策委員会を開き、18日開業を堅守。関係業者やドクターも含めて職員50人程で床の拭き掃除を行い、間に合わせました。CTやMRIなどに浸水はなかったですが、MRIの部屋の周りに施した金属のシールド下に水が入ってしまい、MRIの使用には2ヵ月程度かかりました。職員は30人以上が自宅が床上浸水に遭いながら懸命に片付けしてくれました。その愛社精神に心打たれましたし、職員同士の絆も一層深まったと思います。

新病院の全体像を。

病棟は一般病棟が2病棟、地域包括ケア病棟が1病棟、療養病棟が1病棟で、旧病院と基本的には同じ207床です。診療科目は12科、常勤医師は内科が7人、外科2人、放射線科1人で、看護師121人のスタッフは全276人です。1日の外来患者数は130人、平均入院患者数は145人、年間の新入院患者数が1500人、救急車搬送患者数は年300人です。CTやMRIなどの機械は旧病院から移設し、血管撮影装置、レントゲン装置、超音波の診断装置などの一部古くなったものは更新しました。

新病院の特徴や特性は。

1階の待合室から各検査室まで最短でアクセスできる構造です。2階にリハビリ室があり、患者数増加を見越して広いスペースをとり、景色のいい最高のロケーションです。3~6階が病室で、個室を増やし一部にはシャワー室も設けました。大部屋は廊下側にも外から光が入るような構造です。廊下の幅も広くし、患者様同士が食事もできる広い談話室を設置。スタッフステーションも広くし、7階には約230人収容の多目的ホールを設け、研修などに使います。職員には病院全体の休憩室がありますが、それに加えて各部署に休憩室を設けています。

地域における病院の役割や使命についてご見解を。

当病院は1983年の開院以来、地域の循環器医療の拠点として歴史を刻んできました。循環器はこれまで24時間・365日救急患者を受け入れ、年間200人を超える循環器救急患者の受入れと500~600人の循環器疾患患者の入院治療を行っています。救急の輪番病院ではないですが、補完的役割も担っています。現在は退職に伴う医師の減員から日曜は救急患者の受入れを休止しており、早急に循環器医師を補充して従来の体制に戻したいと思います。
また、医師会立病院ですので医師会の先生からの紹介は24時間受け入れ、医師会が行っている在宅医療、介護連携事業、休日夜間急患センターのバックベッドとしての機能も担っています。更に大洲には市立大洲病院、大洲中央病院、大洲記念病院と当病院の四つの中小病院が機能を分担し地域医療を担っていますが、外科医が少ないことから多くの患者様が松山などに行かざるを得ない状況でした。当病院では幸い今年の4月より待望の外科医が2人入職し、大学から麻酔科医師を派遣していただき待機的な手術が可能になりました。今後は麻酔科の常勤医師を採用して緊急対応も取れるようにし、できれば救急の輪番体制に参加し貢献したいと考えています。

高齢化に伴う介護、看護のあり方はいかがでしょうか。

大洲喜多地域の高齢化率は2015年が35%で、45年には49・7%になる見通しです。当医師会の会員の先生は60人いますが、今年4月現在の平均年齢が65・9歳とこちらも高齢化しています。開業医の数は10年前と比べ8人減り、08年以降の新規開業が5件、廃業は11件。宇和島、八幡浜、西予市には大きな市立病院があり、それが基幹病院になっていますが、この地域は中小4病院が機能分担しているような状況です。医師がどうしても4病院に分散され、各病院がぎりぎりの人員でやりくりしています。高齢化が急速に進むと多くの方が年金生活になり、圏域外の医療機関を受診するには肉体的、精神的、経済的な負担がのしかかってきます。開業医も減少し高齢化が進んでおり、この地域の在宅医療や介護は今後限界がくるでしょう。当病院は地域医療支援病院として他の医療機関や大学と連携を強化しながら、地域完結型の医療を目指すことが極めて重大だと思います。
臨床研修病院というのがあり、県内に16ありますが、大洲にはありません。病院の規模が小さいために研修病院にはなれませんし、研修病院でなければ若い先生は来ません。また、県内には23の地域枠医師派遣病院がありますが、この地域では市立大洲病院のみで、診療科も限られます。市立の宇和島、八幡浜両病院は臨床研修病院であり基幹病院ですので若い先生が来ますが、ここは違います。この特殊性を考慮して考えていただかないと取り残されてしまいます。

経営面はいかがでしょう。

医師会病院は私立病院と同じように適切な収支が不可欠です。それに加えて当病院は地域医療支援病院であり、開業医の先生がCTやMRI、高度な医療機器を使って検査などを行える共同利用施設となります。高額な医療機器を常備しなくてはならないし、一定の紹介患者の受け入れが必要になります。救急医療の実施も求められていますので、地域医療支援病院は通常の病院に比べ経済的な負担が大きい。そのために若い先生に来てもらい医師不足を解消して稼働率を上げること、緊急外科手術対応のために常勤の麻酔科医師を採用し、輪番病院に参加することなどを実現したいですし、不足している診療科新設も考えていきたいですね。

病院として様々な経営努力に取り組んでいますね。

2年前から県内に先駆けて病院あげて心電図検定試験に取り組んでいます。8月の試験には医師、看護師だけでなく栄養士や薬剤師なども含め47人が受験しました。受験料や受験地までの交通・宿泊費は全て病院が負担してチャレンジしています。正確に心電図が読めることは非常に重要なんです。
また、いち早く91年に院内保育室も完備。24時間体制で子育て中の女医さんや看護師さんが働きやすい環境にしています。開院以来、多くの英文の論文を輩出し、毎年のように若い先生は国際学会に出席しています。更に日本心エコー図学会認定技師という非常に難しい資格がありますが、その資格を持っている超音波技師が当病院に2人います。全国に60数人、四国に4人しかいない中、当病院に2人いるのは誇りであり財産です。こうした優秀な人材も生かし、一層地域医療を支えていく覚悟です。

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