経営者インタビュー_義農味噌社長

地産地消柱に全国規模でOEM展開
独自の営業活動堅守し消費者ニーズ掴む

義農味噌(株)社長

田中 正志さん

1957年2月21日生まれ、62歳、松前町出身。山梨大学工学部発酵生産学科卒。健康面を考慮して休日は温泉に行き、囲碁の腕前はアマ3段。自社で経理部長を務める夫人との間には子供が5人。信条は「積小為大」。
(週刊愛媛経済レポート2019年5月27日号掲載)

今回は県内最大手の麦味噌 メーカー、義農味噌さんをお訪ねしました。

弊社は1953年に父の田中義一が松前町で創業しました。同町に昔、義農作兵衛という篤農家で麦作りの神様がおり、その「義農」という呼び名を社名に付け、73年に法人化しました。私は2代目で、16年前の50周年時に社長就任。現住所に2010年、新社屋・工場を建設し移転しました。工場は県HACCPの認証を受けています。

取り扱い商品は。

生味噌をベースに低塩化・無添加商品など全て独自に研究・開発しています。主力の生味噌をはじめ、出汁入り味噌、業務用味噌、即席味噌汁、ひしおなどのおかず味噌、醤油、こんにゃくなど、製造品目は百余種に上ります。

味噌のこだわりは。

代表銘柄の「伊予のみそ」は南予地方の味噌に近いですが、やや甘さを控えめにし、どなたが食べても懐かしいという味です。化学調味料を使わない本物の味であり、それは麹の美味しさです。

商品作りの柱に据えているテーマはいかがでしょうか。

大手との競争や食生活も多様化し、家庭で味噌汁を作る機会が減少するなか、目を向けたのが「地産地消」で、地元のものをもっと大切にしようと考えました。ある時、南予の方が工場見学に来られ「伊予さつま(魚と味噌を使った愛媛の郷土料理)を孫に食べさせたいが、手間をかけず簡単に作れる商品はないか」と言われました。その一言で伊予さつまを03年に苦労して作り、学校給食にも採用されました。経営理念に「私たちは、えひめの麦みそ文化を、伝承・発展させます」と掲げており、その第1号の地産地消商品です。

次に思い付いたのがドレッシングで、傷がついて捨てられる伊予柑と、七折梅を使ったドレッシングを作りました。更に周桑産の玉ねぎを使い、JA直売所の周ちゃん広場で売るOEM第1号のドレッシングを作り、ブレイクしました。同施設で試食販売したりイベントを手伝うなかで全国の直売所の方々と出会い、各地に行って商品開発するようになりました。その数は今では200ヵ所以上になります。

各地の特産食材を使った商品開発ですね。

農家さんの困っているものを6次産業化してお助けするということです。最初は味噌の消費量が減る中で、何とかせねばと取り組んだ梅ドレッシング、玉ねぎドレッシングなどが水平展開した感じです。また、今はぽん酢、肉味噌の他、(八幡浜の道の駅)アゴラの鱧めしの素や鶏めし、ミートソースなどの加工品も取り扱っています。

味噌とその他の売上比は。

もちろん味噌が多いですが、(味噌以外の商品は)大手がやらないような少量の2千本程度から作って、手間暇かけています。全量全品ほぼ買い上げですので、売上も固いしロスもありません。最盛期は毎月何か商品を生み出していました。現在は35都府県に(OEMの)商品があります。

味噌の販売エリアは。

愛媛、岡山、山口、広島、香川、高知が主体です。愛媛のシェアは弊社が45%位でしょう。麦味噌は甘いから愛媛でしか売れないと思い込んでいましたが、1988年の瀬戸大橋開通に伴い初めて対岸の県に営業先を拡大。苦労しましたが、徐々にスーパーや中国四国生協も取り上げてくれました。広島や山口の人もこの麦味噌は美味しいと言ってくれて、現地の大手スーパーさんへのPB商品供給が始まり、このエリアの麦味噌のナンバーワンになっていきました。

近県以外への展開は。

我々には多くの地産地消のお得意さんがあるので、そこに味噌を入れようと考えました。和歌山、愛知、千葉のドレッシングを作っているお得意さんに声をかけて、まずは店頭で味噌汁をふるまっていきました。

ドレッシングをきっかけに味噌を展開したのですか。

ドレッシングで人間関係はできていました。信州味噌が強い和歌山の産直市場では2千杯ふるまって、味噌が1千個売れました。それから愛知、千葉でやりましたがどこでやっても売れましたよ。

ふるまいながらの販売は今も積極的にやられていますか。

年間100ヵ所以上で行い、大鍋でふるまっています。経費はかかりますが、社員教育と広告宣伝と市場調査の三つを兼ねていますね。最初は3人の営業マンで始め、好評なので他の営業マンや製造部も行かせており、1人が年に1回は必ず行くようにしています。店頭でお客様から美味しいという生の声を聞けることで、社員も自信がつきます。夜はみんなで成功体験を語ることで各部の仲も深まりました。東京に行くと1人10万円程かかり、経理からは止めてくれとも言われましたが(苦笑)、それでも続けています。これはお客様を作る活動でもあり、6年程やっています。それで伊予のみそも売れ始め、関東の色々なところに置かれています。

しかし、家庭で味噌汁を作らなくなっているので、弊社も即席の味噌汁を作っています。味噌がおいしくて出汁が本物の商品で、カツオとイリコと昆布を煮出して作っています。また、新たな南予タイプの即席味噌汁をこのほど作り、独自の販路を構築するつもりです。

力を入れていることは。

その一つが業務用の液味噌サーバーです。高速道のサービスエリアや学校給食、ホテルなどにサーバーが入っていますが、ほとんどが大手のものです。我々はせっかく伊予のみそを作っているので、2年前からサーバーをやり始め、四国のSAや大阪の寿司店などに少しずつ広げています。通常液糖やシロップで味噌を柔らかくするところを、弊社は出汁で柔らかくしています。コストよりも本物を作ろうと取り組んでいます。

味噌は並べただけでは買ってくれません。店頭でふるまいを行うと行列ができて将来の見込み客が食べてくれます。そのやり方でやり続けて、味噌と即席味噌汁と液みそが広がってきました。先日はあるSAの支配人が来られ、味噌を弊社のものに変えたいとのことでした。「値段は倍です」と言いましたが、倍でもいいとのことでした。本物が欲しいという方、美味しいということに共感していただける方とお話を進めています。

「第8回四国でいちばん大切にしたい会社大賞」で2月、「中小企業基盤整備機構四国本部長賞」を受賞されましたね。

社員と一緒にいただいた賞です。業績よりも理念が浸透しているかというのが一番大切で、理念が絵に描いた餅ではなくて、全社で取り組まれているかということが大きかったみたいです。各年代の社員やパートさんも含め、弊社のベクトルは合っているのではないでしょうか。ますます気を引き締めて経営に当たりたいと思います。

愛媛の食文化、味噌文化における御社の役割について改めて見解を伺います。

最近はジャンクフードなどが溢れていますが、健全な地域の食文化をきちんと子供たちに伝えていかねばなりません。弊社は味噌の手作り教室や見学会などのお客様に対する啓蒙活動にずっと取り組み、学校給食に格安で食材を提供しています。こうした取り組みは経費抜きにこれからも続けます。

大手の味噌メーカーが価格優先で攻勢を強めると、地域の食文化は消えていきます。後継者難、設備の老朽化、販路の縮小から愛媛の味噌メーカーを取り巻く環境は非常に厳しいです。弊社は本物を作り続け、地域の食文化を守らなければいけません。若い人材にもこうした仕事の門戸をぜひ叩いてほしいですね。

 

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