道後温泉旅館組合理事長 新山氏

道後温泉本館工事に対し市とタッグ
独自事業も次々、「面白い道後」構築へ

道後温泉旅館協同組合理事長

新山 富左衛門(にいやま・とみざえもん)さん

1950年9月14日生まれ、68歳、松山市出身。法政大学卒。㈱古湧園社長。愛媛経済同友会の代表幹事を始め公職・団体職は20近くに及ぶ。趣味は波止釣りとゴルフ。「富左衛門」は代々継承の名跡でなく本名。
(週刊愛媛経済レポート2019年4月8日号掲載)

道後温泉本館の保存修理が1月から始まりました。影響はいかがですか。

個々の旅館のデータをみると、お客様の元々の流れは続いていると思います。1~2月の入込客は正月を除いてオフ期で、数字が大きく変動することはありません。お客様が多い3月以降の動向が心配ですね。保存修理工事の本格化に伴い入込客が少し落ちてくるのかなという不安はあります。日帰り客や商店街の客足にはあまり影響はないと考えております。

工事は7年間に及びます。

組合にも本館の入浴はできるのかという問い合わせは多くありますが、工事は2期に分かれ、入浴は継続されます。また、別館飛鳥乃湯泉、椿湯もあります。ただ、その間の入込客減少を食い止めるため色々なアクションが必要です。

既に始動していますね。

「道後REBORNプロジェクト」など松山市の施策が動いています。手塚プロダクションと提携し火の鳥が道後に降臨するという物語を手掛けていて、プロジェクションマッピングの他、火の鳥が降臨して再生していくというアニメも計画されており、テレビなどで放映されます。注目を集めて工事の影響が払拭されるのではないかと期待しています。

また、「道後アート2019、2020」も5月末にはプレスリリースの予定です。メインアーティストは、世界的にも有名な東京藝術大学美術学部長の日比野克彦教授に快諾をいただいており、地元のアーティストがコラボしながら色々な取り組みを行っていただきます。組合としても松山市とタッグを組みこのアート事業を成功させるつもりです。また独自の施策も打たねばなりません。

具体策はいかがですか。

その一つが4月中を目途に始める「道後トライシクル」という電動三輪車のレンタカーです。道後を拠点にミカン色の電動三輪車が市内を走り、最高時速40㌔㍍で1回の充電により60㌔㍍走れ、普通免許で運転できます。有馬温泉では既に走っており、非常に人気のある乗り物です。オープニングセレモニーには野志市長に乗っていただこうかと企画中です。

また「道後プレミアムパス」という観光手形を4月中旬から1枚1千円で販売する予定です。パス購入で無料の観光ガイド付きのミニツアーが楽しめます。例えば道後公園の句碑巡り、湯神社や伊佐爾波神社などのパワースポット巡り、道後温泉の第4分湯場の見学などができます。パスの木札にはシリアルナンバーが入っていて、宿泊券が当たる抽選会を行いHPで発表します。パスに描かれている女の子は「温泉むすめ」というキャラクターで、名前は「道後泉海」。温泉むすめは全国の有名温泉地が連携し展開しており、全国に113体、四国には4体いて、その追っかけがすごいんですよ。AKBみたいにすごい人気です(笑)。パスは抽選で温泉むすめのグッズも当たるようにします。今までにない道後の楽しさが体感できるパスにします。「道後泉海」のデザインを将来的には10種類くらいに増やし、フィギュアなども作成する予定です。

とても積極的ですね。

道後でしか味わえない着地型の観光コンテンツを進めていきます。今回の保存修理工事を払拭するために、色々な話題性をどんどん発信して、道後は面白いということをアピールしたいですね。各旅館が努力し、今までのレガシーをしっかり継承しながら、プラスαをしっかりやっていくということです。これからの7年間に最低でも毎年二つか三つは新しいイベントをやっていこうと考えています。市内にゴルフ場のカートのような車両も走れば面白いですよね(笑)。

私は飛鳥乃湯泉の指定管理会社である道後コンソーシアムの理事長でもあるのですが、本館の保存修理工事の関係で、御迷惑をおかけするであろうお客様に飛鳥乃湯泉にご入浴いただき、7年間の間しっかり売り込んで、第3の外湯として定着させたいと思っています。飛鳥乃湯泉の広場でも色々なイベントを計画中です。

知恵の出しどころですね。

将来的には、道後温泉全体でキャッシュレスで精算ができるような、外国人観光客にも便利な電子決済の導入を検討中です。今電子決済は群雄割拠で色々なところで立ち上がっていますので、しっかり調査研究していきたいと考えています。また、今一番期待できるのは7月15日から就航する空路の松山―台湾便です。多くの台湾からのお客様が入ってきます。180人乗りで当面週2便としても大きいですよね。定住人口が減少する地方では交流人口の拡大が絶対に必要です。

改めて道後の位置づけは。

国内の観光は客数が毎年5~10%近く減少しています。でも道後は減っていません。ここは自慢したいところです。じゃらんの「もう一度行ってみたい」温泉地ランキングで今年6位から4位に上がりました。「行ってみたい」ではなく「もう一度行ってみたい」ということなので、リピーターにつながるサービス、おもてなしもできているということでしょう。これも道後の人気が落ちていない要因の一つだと思います。

ただ旅館業界では、働き手の減少により賃金アップとなり、宿泊料金に転嫁されてきています。料金が上がってくるとツアー参加が減り、団体向けの宴会場の必要性がなく、個人対応ができるような施設に変わってきており、その分収容力が減っています。旅行規模も縮小傾向にあるので、人数が減ってくる代わりに高単価を求めるようになります。そんな変革期が今道後温泉にきています。

耐震促進法の施行を機に道後でも建て替えや施設補強などを行い、宴会場をレストランにしたり、ゲストルームに変更したりしているところが多いですね。快適な空間を作っていくことが重要です。これからはストレスフリーという言葉が一番重要なキーワードになると思います。また、宿泊人数、売上ではなく、生産性と利益率が重要なポイントになってきます。

旅館組合事務局を置く「道後温泉観光会館」の新築計画はいかがでしょうか。

財源確保の目途がつけばすぐにでもやります。まだ二転三転していますが、少なくとも改修することは間違いありません。財源確保をずっと模索しています。

一方、愛媛経済同友会の代表幹事として観光振興を含めた見解をお聞かせ下さい。

代表幹事に旅館業から就任したのは、愛媛では私が最初です。観光振興を進めるにはいいタイミングだったのかなと思います。インバウンドの誘致にはSNSやITを大いに利用して海外に向けて発信していかなくてはなりません。

どの業界も労働力不足が深刻化するなか、4月から宿泊業など14業種で外国人の就労を認める特定技能実習制度が始動します。宿泊業界での枠は5年間で2万2千人と言われており、優秀な人材は全国で取り合いになります。働きやすい環境を作り、働いてみたいと選ばれる地域になることが大事で、賃金だけではなく、家賃や食費、余暇などを含めた愛媛の住みやすさをアピールしなければいけません。外国人労働者に対する待遇は日本人と平等にし、心のケアができるようコミュニケーションが大切です。海外においては観光振興のプロモーションだけでなく、働く人のための発信が必要です。

愛媛経済同友会としては人口減問題をどのようにクリアして、長期的にどういうビジョンをつくっていくかということと、高齢者がいかに健康に生活し余暇を過ごしていくかということにも力を注ぎ、提言を進めてまいります。

 

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